COLUMN家づくりコラム

家づくり専門用語をカンタン解説!国が普及を後押しする「長期優良住宅」って何?

イエタッタ編集部
2023.11.29

 

新しい住まいを「建てたい、買いたい」と思い、雑誌やインターネットなどで住まい関連の情報を探していたら、わかりにくい、難解な専門用語に遭遇したことはありませんか? そんなときは、遠慮をせずに工務店やハウスメーカーの営業担当者に聞いてみるのもいいでしょう。でも、いろいろと聞くのはちょっと気が引ける――。そこで住宅業界の取材を続けて10年超の住宅産業新聞の記者が、難しい専門用語をできるだけ簡単に、わかりやすくお伝えします。

 

今回は、2023年度の補正予算に盛り込まれた新たな補助事業で、100万円が補助される見込みとなった「長期優良住宅」について解説します。なお、コラムの最後には長期優良住宅にすることで受けることができるお得な支援制度についても少し紹介しています。

 

- INDEX -

  1. 世代を超えて長く住み継ぐ住まい
  2. 長期優良住宅とはどのような住宅?
  3. 認定取得の鍵となる5つの要件
  4. 長期優良住宅は補助金や税制優遇が充実

 

世代を超えて長く住み継ぐ住まい

長期優良住宅とは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備について講じられた優良な住宅」のこと。少し固い言い回しですが、これは法律(長期優良住宅の普及の促進に関する法律)の文言だからです。長期優良住宅とは、法律に基づく国の制度なのです。

 

 

 

20世紀の住宅の寿命は約30年でした。作っては壊すこと(スクラップアンドビルド)を繰り返し、大量の廃棄物を発生させては、地球環境に悪い影響を与え続けていました。また、せっかく数千万円の費用を費やして建てた住宅も、取り壊すことで資産価値がゼロになってしまいます。

 

もし、質が高くて丈夫な住宅を子どもや孫の代まで住み継ぐことができたなら、次の世代は住宅を建てるための費用負担を軽くすることができるかもしれない――。

 

このように、長期優良住宅が誕生した背景には、これからは「スクラップアンドビルド型」の住宅ではなく、いいものをつくって、きちんと手入れして、世代を超えて長く大切に使う「ストック型」の住宅にしなければいけないという国の想いが込められています。

 

長期優良住宅とはどのような住宅?

長期優良住宅は、2009年に施行された法律の条文で要件などがしっかりと定められています。そして、法律で定められた要件を満たしているかどうかを性能評価機関で審査・確認してもらい、都道府県や市区町村などに計画書を申請して認定を受けることで、はじめて「長期優良住宅」と名乗ることができるのです。

 

 

 

長期優良住宅の認定を受けることができる住宅は、戸建てのほか共同住宅も含まれています。また、近年の制度改正によって新築だけでなくすでに建っている住宅(既存住宅)についても認定を受けることができるようになりました。ここでは主に新築の戸建てに関する内容を紹介します。

 

なお、要件を満たす住宅の設計や煩雑な申請手続きなどは、工務店やハウスメーカーなどが建築主に代わって行うことも認められています。ここで重要なのは、「住宅の着工前に申請する必要がある」こと。そのため、これから注文住宅を依頼する施主さんは、間取りなどのプランを相談する前に「長期優良住宅にしたい」と、営業マンや設計者に一声かけておくと良いでしょう。

 

認定取得の鍵となる5つの要件

長期優良住宅は、主に以下の5つの措置が講じられています。

 

 

 

  1. 住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
  2. 地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
  3. 住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
  4. 維持保全計画が適切なものであること。
  5. 自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること。

 

「住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること」とは、柱などの構造部材が少なくとも100年は使えるか(劣化対策)や高い耐震性能(等級3)を備えているか、断熱性能などの省エネ性能が確保されているか(省エネルギー性)――などの住宅に関する技術的な基準で構成されています。

 

「住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること」は、戸建ての場合、75㎡以上が基準となります。

 

「地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること」については、住宅の高さ制限や自治体などが定めている景観計画などの建設地に対して求められている基本的な基準・規制をクリアすることが必要となります。

 

「維持保全計画が適切なものであること」については、認定を受ける際に提出する維持保全の計画書の点検場所や点検期間、資金計画が適切かどうかを判断します。長期優良住宅の持ち主は、住宅を長く使えるようにするために、維持保全計画書どおりの点検・修繕を行い、住宅の維持保全をすることが求められています。

 

最後に、「自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること」については、土砂災害や地すべりなどの可能性が高い地域(土砂災害特別警戒区域など)では、長期優良住宅の認定を受けることができません。詳しくは、各自治体のハザードマップを確認するとよいでしょう。

 

長期優良住宅は補助金や税制優遇が充実

さまざまな要件を満たし、定期的な点検・メンテナンスが求められる長期優良住宅ですが、施主さんにとって認定を取得するメリットはあるのでしょうか?

 

実は、長期優良住宅の法律には以下のような条文があります。

 

「国及び地方公共団体は、長期優良住宅の普及を促進するために必要な財政上及び金融上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない」(第三条)

 

つまり国は、法律に基づいて、補助金や金利優遇、税の特別措置などを使って長期優良住宅の普及を強力に後押ししているのです。

 

例えば、年末の住宅ローン残高の0.7%を13年間、所得税額から控除する住宅ローン減税では、住宅の性能に応じて借入限度額が異なります。
一般の新築住宅が3000万円(控除限度額21万円×13年間)のところ、長期優良住宅の場合は、5000万円(控除限度額は35万円×13年間)となります。住宅ローン減税を最大限活用すると、長期優良住宅のほうが182万円もお得になります。(2023年12月31日までに入居した場合)

 

また、2024年3月31日までに新築された住宅は、登録免許税率の引き下げ(保存登記は0.15%から0.1%)や不動産取得税の控除額の拡大(1200万円が1300万円)、固定資産税の減税措置(1/2減額)の適用期間の延長(1~3年間を1~5年間)などが受けられます。

 

このほか、2023年11月10日に閣議決定された令和5年度補正予算案に盛り込まれた「子育てエコホーム支援事業」では、子育て世帯・若者夫婦世帯による住宅新築に対して、長期優良住宅の場合は1戸あたり100万円の補助金を支給するとしています。

 

ちなみに、2022年度の長期優良住宅の認定率は29.3%と約3割の新築戸建てが認定を取得しています。何十年も住み続ける住宅だからこそ、品質や寿命、メンテナンス性、税制優遇など、長い目でみたときの価値にこだわった住まいづくりをしてみてください。

 

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執筆:住宅産業新聞社

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※この記事は2023年11月24日時点の情報を基に執筆しております。