COLUMN家づくりコラム

家づくり専門用語をカンタン解説!最近の住まいに欠かせない「レジリエンス」って何?

イエタッタ編集部
2023.12.15

 

 

新しい住まいを「建てたい、買いたい」と思い、雑誌やインターネットなどで住まい関連の情報を探していたら、わかりにくい、難解な専門用語に遭遇したことはありませんか?

そんなときは、遠慮をせずに工務店やハウスメーカーの営業担当者に聞いてみるのもいいでしょう。でも、いろいろと聞くのはちょっと気が引ける――。そこで住宅業界の取材を続けて10年超の住宅産業新聞の記者が、難しい専門用語をできるだけ簡単に、わかりやすくお伝えします。

 

今回は、近年の異常気象によって激甚化・頻発化する水害や土砂災害などの自然災害に対する住まいの備えとして工務店やハウスメーカーが積極的に提案する「レジリエンス」について解説します。

 

-INDEX-

  1. 災害から家族を守る「安心・安全」な住宅
  2. 地震、台風、水害など激甚化する自然災害に対応
  3. チェックリストで「気付き」と「備え」を

 

災害から家族を守る「安心・安全」な住宅

「レジリエンス(resilience)」は、直訳すると「回復力」や「反発力」、「復元力」となります。「しなやかさ」と訳す場合もあるようです。住宅についていえば、自然災害や非常事態が発生しても、速やかに日常生活に戻れるような設備や仕様、環境を備えた住宅といえるでしょう。

 

つまり、レジリエンス住宅は、災害から家族の命を守る「安心・安全」な住宅と言い換えることもできます。最近では、命に加えて「健康」も守るという発想のレジリエンス住宅も増えています。

 

ちなみに、住宅業界で「レジリエンス」という言葉がはじめて使われたのは2013年頃のようです。当時の内閣によって閣議決定された「国土強靭化基本計画」の考え方に基づき、LIXIL住宅研究所が開発した一戸建住宅のコンセプトモデルの名前に「レジリエンス」という言葉が使われました。(住宅産業新聞2013年10月24日掲載)

 

その後、コンセプトモデルは正式な商品として発売され、同社のほかにもハウスメーカーや工務店などによる「レジリエンス」の考え方を取り入れた住宅の商品化が相次ぎました。地震などの強い揺れにも繰り返し耐える強固な構造体や、万が一の停電時や断水時にも電気や飲料水を確保する設備機器、新型コロナのような感染力の高いウイルスが流行しても住宅内感染の可能性を抑える空気環境など、「レジリエンス」の提案内容はそれぞれ異なりますが、「レジリエンス」はすでに多くのハウスメーカーや工務店が取り組む「基本性能」として浸透しています。

 

現在、レジリエンス住宅に関する公的な基準はありません。そのため、ハウスメーカーや工務店は、それぞれの強みを生かしたさまざまな「レジリエンス住宅」の提案をしているのです。

 

地震、台風、水害など激甚化する自然災害に対応

レジリエンス住宅の具体例をいくつか紹介しましょう。

 

 地震への備え

 

まずは、地震への備えについてです。建築基準法では、建物の最低限の耐震性能として、「数百年に一度起こる大地震に耐えうる強度」を求めています。

 

レジリエンス住宅をアピールする工務店やハウスメーカーは、法律で求める耐震性能の1・5倍の強度(品確法の耐震等級3)を持つ場合が多いでしょう。本震の前後で繰り返される大きな余震にも耐えることができるとアピールしています。

 

さらに、大きな揺れを感じたら、ガス漏れを防ぐためにガスメーターの栓が自動で閉まったり、漏電などによる火災を防ぐために分電盤のブレーカーを自動で落としたりする機能もあります。このほか、家具の転倒を防止する固定金具や、食器棚から食器が落ちてこないように地震の揺れを感知して開き扉をロックする耐震ラッチなども効果的です。

 

停電への備え

 

地震などの大規模な自然災害によって、停電や断水が発生する場合もあります。

 

住宅に太陽光発電システムや蓄電池がある場合は、「自立運転機能」に切り替えることで非常用電源として利用できる場合があります。気をつけなければいけないのは、運転モードを切り替える必要があること。

 

ハウスメーカーによると過去の停電時、せっかく太陽光発電システムと蓄電池があるのに、運転モードの切り替え方法がわからなかったために、電気が使えなかったというケースもあったそうです。災害はいつ発生するかわかりません。万が一の事態に備えて、事前に操作方法を確認しておくとよいでしょう。

 

備蓄の管理

 

大規模な災害が発生したとき、自治体などが開設する避難所を利用する人のほかに、最近では自宅で避難生活を送る「在宅避難」を選ぶ人も増えています。仮に、水や電気、ガスなどのライフラインが止まっていても、太陽光発電システムなどで必要最低限の電気が確保できれば、倒壊の心配がない暮らし慣れた自宅にいるほうが安心というケースもあるでしょう。

 

在宅避難で重要になるのが水や食料などの家庭備蓄。国は、最低でも3日分、できれば1週間分程度の食料品の備蓄が望ましいとしています。飲料水は1人あたり1日1リットル。調理用の水を含めると1日3リットルあれば安心です。このほか、米や缶詰などがあるとよいでしょう。

 

家庭備蓄に対して、工務店やハウスメーカーは「ローリングストック」という収納方法を提案しています。普段から少し多めに食材などを買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食品を家に備蓄しておくというものです。常に古いものから使うことで、賞味期限が切れる心配も減ります。

 

非常用の食品を備蓄しておくスペースがもったいない、賞味期限の管理も大変という悩みを収納の工夫で解決する備蓄方法です。

 

チェックリストで「気付き」と「備え」を

最後に、省エネ住宅の普及を推進する日本サステナブル建築協会がウェブサイトで「CASBEE―レジリエンス住宅チェックリスト」を公開しています。住まいの建物の性能と住まい手の暮らし方を対象に、平常時の「免疫力」、災害発生時の「土壇場力」、災害後の「サバイバル力」の3つの観点から「住まいのレジリエンス度」が確認できます。全42項目、「はい」か「いいえ」の2択選択式のチェックリストです。

 

 

どのようなことに注意すれば「安心・安全」な住まいや暮らしが実現できるのか――。住まいにまつわるさまざまなリスクに気付き、備える方法を知ることで、理想の住まいづくりに役立ててください。

 

 

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執筆:住宅産業新聞社

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※この記事は2023年12月15日時点の情報を基に執筆しております。