COLUMN家づくりコラム

家づくり専門用語をカンタン解説!巨大地震から命を守る、住まいの耐震技術

イエタッタ編集部
2024.01.30

 

2024年1月1日午後4時10分、石川県能登半島を震源とする最大震度7の地震が発生しました。この地震により、石川県内だけでも3万8713棟の住家被害が発生(1月23日午後2時現在)しています。

 

住まいは、「家族の命と暮らしを守るもの」。そこで今回は、住まいの耐震性能について解説します。

 

- INDEX -

  1. いつどこで発生してもおかしくない「巨大地震」
  2. 住まいの耐震性能は「耐震等級」で把握できる
  3. 地震に対する住まいの備え、「耐震」、「制震」、「免震」の違いは?
  4. 災害を回避するには「ハザードマップ」の確認を

 

いつどこで発生してもおかしくない「巨大地震」

 

世界の地震の約1割が日本の周辺で発生しているといわれるほど、地震大国の日本。 政府の地震調査研究推進本部は、2020年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した地震動予測地図を作成し、地震への備えを呼びかけています。

 

地図をみると、埼玉県では東部の確率が高く、東部は26%以上の確率で30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる可能性があるとしています。一方、能登半島沖地震で大きな被害が発生した能登半島は、震度6弱以上の揺れが発生する確率は3%程度とされていました。これは約1000年に1度の確率です。つまり、確率が低いから安全とは限りません。日本のどこに住んでいても、大きな地震にあう可能性があります。住まいは、大切な家族と一日の大半を過ごす場所だからこそ、しっかりと地震への備えをしておいたほうがいいでしょう。

 

参照元:地震調査研究推進本部事務局/「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント

 

住まいの耐震性能は「耐震等級」で把握できる

 

住まいの耐震性能の基準については、過去の震災を機に構造や強度、設計の方法などが見直されています。基準となるのは、建物の構造や用途などに関する最低の基準を定めた法律「建築基準法」です。40年以上前の1981年5月に耐震基準が大幅に変更され、その前後で「旧耐震基準」と「新耐震基準」におおまかに分類されています。

 

そして、耐震性能に関する最も新しい基準は、2000年4月1日に施行された法律(住宅の品質確保の促進等に関する法律、以下品確法)となります。

 

品確法では、地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさに応じて3つの等級を設けました。等級が高くなるほど、地震に強い住まいといえます。具体的には、耐震等級1は「数百年に1度起こる地震(震度6強から震度7)の力に対して倒壊しない程度の耐久性」、等級2は「等級1の1.25倍の地震の力に対して倒壊しない程度の耐久性」、等級3は「等級1の1.5倍の地震の力に対して倒壊しない程度の耐久性」。この等級1で求められている性能は、建築基準法に基づく性能となります。

 

耐震等級とは?

 

等級 定義 性能
耐震等級1 きわめてまれに発生する大地震による力に対して倒壊、崩壊しない程度 一般住宅の耐震性能(建築基準法がすべての建物に求める最低限の耐震基準と同程度)
耐震等級2 耐震等級1で想定される地震の1.25倍の力に対して倒壊、崩壊しない程度 学校や病院などの公共施設と同じくらいの耐震性能
耐震等級3 耐震等級1で想定される地震の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊しない程度 消防署や警察署と同じくらいの耐震性能

 

地震に対する住まいの備え、「耐震」、「制震」、「免震」の違いは?

 

それでは、地震などの揺れに対する住まいの備えについてみてみましょう。建物の地震対策は、大きく「耐震」「制震」「免震」の3つの方法に分類されます。住まいづくりを始めるとよく耳にする言葉ですが、3つの地震対策のそれぞれの特徴や違いを整理してみましょう。

 

まず「耐震」ですが、住まいの柱や梁、床、壁などの構造躯体の強度を高めて、地震の揺れに「耐える」方法です。最も一般的な構造とされていて、国内の建物の多くは「耐震構造」を採用しています。他の構造と比べると最も低コストで採用できるというメリットがあります。一方、想定を大きく超えるような強い揺れによって、柱や梁などの構造が損傷すると、それ以降の揺れに対して期待通りの性能が発揮できなくなるという可能性があります。

 

「制震」は、住まいに地震の力を吸収する部品や設備を付けて、揺れを「抑制」する方法です。例えば、地震の揺れを粘り気のあるゴムやオイル、金属などが伸び縮みすることで運動エネルギーを熱エネルギーに変えて揺れを小さく抑えます。住まいに伝わる揺れが小さくなるため、制震装置が付いた住まいで感じる揺れも小さくなります。耐震と比べると、制震装置などの追加費用が発生します。最近では、本震後にも頻発する大きな余震を想定し、耐震+制震の合わせ技で、繰り返しの地震に対する安全・安心感を高めるケースも増えています。

 

そして「免震」です。免震は、住まいと基礎の間にゴムやダンパー、ローラーなどを挟み込み、地面から浮かせることで、地震の揺れから「免れる」方法です。住まいの揺れが大幅に軽減されるので家具の転倒などが防げるほか、揺れに対する恐怖を抑えることができます。ただし、コストは耐震や制震と比べると高くなり、地面と住まいを完全に切り離すための余白(揺れしろ)を確保する必要があります。

 

「耐震」、「制震」、「免震」の違いは?

 

  解説
耐震 地震の揺れに耐える
制震 地震の揺れを吸収する
免震 地震の揺れを伝えない

 

災害を回避するには「ハザードマップ」の確認を

 

最後に、地震対策で忘れてはいけないものが、「どこに住まいを建てるか」でしょう。いくら耐震性能の高い住まいでも、水分を含んだ柔らかい土の上では土砂崩れや液状化などが発生するかもしれません。また、地盤の硬さや柔らかさによっては、少し離れた場所でも揺れやすい・揺れにくいなどの違いが出る場合もあります。

 

 

各自治体は、直下地震などの大きな地震を想定した地震防災マップやハザードマップを作成し、ホームページで公開しています。土地探しから住まいづくりを始めている人は、まずは住みたい場所のハザードマップを確認してみるのもよいでしょう。

 

参照元:埼玉県庁/県内市町村地震ハザードマップ

 

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執筆:住宅産業新聞社

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※この記事は2024年1月30日時点の情報を基に執筆しております。