COLUMN家づくりコラム

ZEHは省エネだけじゃない、9割超が「暮らしやすさ」を実感、経産省の調査発表会から最新動向をレポート

イエタッタ編集部
2023.02.09

 

 

経済産業省資源エネルギー庁は2022年12月、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)実証事業調査発表会を開催しました。発表会では、補助事業などから得られた調査結果を発表しました。

 

この調査結果によると、実際に補助事業を活用したZEHなどに住む世帯の多くがメリットを挙げており、UA値が低いZEHの世帯では9割超の世帯が「暮らしやすい」と回答しました。

 

また、新設住宅建築のうち、ZEH支援事業で住宅を手掛けたのは、多くがハウスメーカーで、そのほかの一般工務店の手掛けた割合はメーカーに比べて低くなったようです。

 

 

 

 

- INDEX -

  1. ZEHとは?
  2. ZEHの3つのメリットプラスα
  3. 最新の調査結果を解説
  4. 補助金でお得にZEHが取得できる

 

ZEHとは?

新築の一戸建て住宅の取得を検討している人は、ハウスメーカーのホームページやパンフレットなどで、一度は「ZEH(ゼッチ)」という単語を目にしたことがあるのではないでしょうか。今、国と住宅業界がタッグを組みZEHの普及に取り組んでいるのです。

 

ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語です。LEDなどの省エネ機器を導入し、壁や窓の断熱性能を高めて消費するエネルギーをできるだけ抑えて、太陽光発電や燃料電池などでエネルギーを創り、快適な室内環境を保ちながら「エネルギー収支をゼロ以下にする家」のことです。

 

つまり、家庭で使用するエネルギーと、太陽光発電などで創るエネルギーをバランスして、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家ということです。「断熱」×「省エネ」×「創エネ」の3要素が必要不可欠となります。

 

ZEHの普及は、脱炭素化にもつながります。国が掲げる目標では、「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」「2030年に新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」とされています。

 

2021年度の注文戸建住宅のZEH普及率は26.7%に留まります。ただし、全国規模で事業を展開するハウスメーカーに絞ると、ZEH普及率は61.3%となり、すでに2棟に1棟がZEHとなっています(数値はZEH実証事業調査発表会資料から抜粋)。あと数年後には、ZEHが事実上の標準仕様となるでしょう。

 

 

ZEHの3つのメリットプラスα

ZEHのメリットについては、主に3点あります。「経済性」と「快適・健康性」、「レジリエンス(災害時の備え)」です。

 

経済性では、高い断熱性能や高効率設備の利用により、月々の光熱費が安く抑えられる可能性があります。さらに、太陽光発電等の創エネについて売電を行った場合は収入を得ることもできます。昨今の光熱費上昇局面では、ZEHのメリットがより一層際立ちます。

 

次に、快適・健康性。断熱の家は、室温を一定に保ちやすいので、夏は涼しく、冬は暖かい、快適な生活が送れます。経産省の解説によると、冬は、効率的に家全体を暖められるので、急激な温度変化によるヒートショックによる心筋梗塞等の事故を防ぐ効果もあるとのことです。

 

最後にレジリエンス。台風や地震等、災害の発生に伴う停電時においても、太陽光発電や蓄電池を活用すれば電気が使うことができ、非常時でも安心な生活を送ることができます。

 

そして、もうひとつのメリットを付け加えるとすれば、ZEHの基準などを満たすことで、国や自治体などから補助金が得られるケースもあります。国は補助金でZEHの普及を後押ししているのです。具体的な制度や補助額は、ハウスメーカーなどの営業担当者に確認してみると良いでしょう。

 

 

最新の調査結果を解説

それでは、最新のZEH実証事業調査発表会で解説された調査結果について紹介しましょう。

 

調査では、2018年~2020年にZEH補助事業によって建築したZEH(およびZEH+)に住む1年目の世帯に、推奨ポイント(複数回答)を尋ねました。すると、「光熱費の安さ」が突出して高く、全体の62.6%を占める回答となりました。

 

このほか、「夏の省エネ効果」が49.9%、「冬の省エネ効果」が43.2%と続き、「冬に結露が発生しない」は41.5%、「寝室や居間など、部屋ごとの温度差が小さく過ごしやすい」が35.6%などが続きます。室温にかかわらないの回答では、「騒音が少ない(室内の静かさ)」が34.8%ありました。

 

約半数が、「省エネ効果」の高さを実感し、オススメポイントと認識しているようです。光熱費が高騰する昨今、省エネ効果によって少しでも生活費が圧縮できるのはうれしいですよね。

 

さらに、断熱・外皮性能(UA値)別に、ZEHに住んだ夏季の実感を聞くと、「快適な住まいが実現できている」が、UA値0.54超0.60以下では73.7%、0.40超0.54以下では74.9%を占め、0.28超0.40以下では91.4%になりました。0.28以下では94.5%でした。

 

冬季の実感では、「以前住んでいた家よりも暖かく暮らしやすかった」の回答も同様の傾向が見られ、UA値0.54超0.60以下では65.5%、0.40超0.54以下では71.1%となりましたが、0.28超0.40以下では93.3%となり、0.28以下では95.9%を占める結果になりました。

 

季節を問わず、外皮性能(UA値)が小さいほど快適で暮らしやすい住宅だということが、この調査結果から読み取れます。

 

なお、この5ヵ年で外皮性能(UA値)は徐々に向上しています。

 

2017年度のZEH補助事業の採択案件は0.55超0.6以下が最多でしたが、2021年度および2020年度補正では0.45超0.5以下が最も多くなりました。

 

創エネ設備を導入した住宅での生活の感想(2年目世帯)では、81. 1%が「良かった点の方が多い」となりました。このほか「良かった点と悪かった点が同じくらい」が17.5%、「悪かった点の方が多い」が1.4%でした。

 

一方、悪かった点の方が多いと回答した理由で最も多かったのが、「初期費用やメンテナンスコストへの不満」が41.7%。「コスト面で本当にメリットがあったか不明」が8.3%など、コスト面での不満が多かったようです。

 

 アンケート結果

 

項目 ZEHとZEH+
(n=4277)
光熱費の安さ 62.6%

夏の省エネ効果(CO2削減・地球温暖化対策への貢献)

49.9%

冬の省エネ効果(CO2削減・地球温暖化対策への貢献)

43.2%
騒音が少ない(室内の静かさ) 34.8%
寝室や居間など、部屋ごとの温度差が小さく過ごしやすい 35.6%
夏の暑さがやわらぐ 34.8%
冬も浴室・洗面脱衣所やトイレが寒くない 32.8%
冬に結露が発生しない 41.4%

温度ムラがないため、ヒートショックの心配がなく

健康な暮らしができた

24.6%
その他

1.6%

 

調査:一般社団法人 環境共創イニシアチブ

 

 

補助金でお得にZEHが取得できる

国は、地球温暖化を抑制する脱炭素社会の実現に向けて、省エネで快適なZEHの普及を推進しています。特に、2023年は「こどもエコすまい支援事業」で、ZEH取得に対して1戸あたり100万円の補助金を出しています。これから住宅取得を検討の際にはZEH導入と補助金の活用も視野に入れてみてください。

 

「こどもエコすまい支援事業」に関する詳しい解説は、当コラム第2回を参考にしてください。取得時期や性能条件など、より具体的な情報を知りたい方は、お近くの住宅展示場の営業スタッフに聞いてみるのも良いでしょう。

 

 

>>住宅の購入費用が100万円お得に!「こどもエコすまい支援事業」 を徹底解説

 

>>記事提供:住宅産業新聞社

 

住宅産業新聞社

住まいや暮らし、ハウスメーカーや住宅設備メーカー、地域工務店、行政、自治体まで、住宅に関するあらゆるニュースを幅広く取り上げます。