COLUMN家づくりコラム

省エネ性能表示制度が2024年4月からスタート、省エネ性能の高い住宅が選びやすくなります

イエタッタ編集部
2023.09.30

 省エネ性能表示制度

 

あなたは現在お住まいの住宅の省エネ性能についてご存知でしょうか? 最近の自動車や家電は、燃費や省エネ性能について星(★)の数で示した「ラベル」を貼付・表示する仕組みが広がっています。

 

それでは住宅はどうでしょうか。一日の大半を過ごす、最も身近な住宅の省エネ性能や冷暖房などでかかる燃費は、実は「よくわからない」という人がほとんどです。省エネ性能が高い住宅ほど、光熱費が低く抑えられる可能性があります。

 

また、自動車や家電のように、住宅の省エネ性能が星(★)の数や数値などで見える化されていれば、より性能の高い住宅に住みたい・欲しいという人にとっては、住宅を選ぶ際の判断材料にもなります。

 

そこで国土交通省は、2024年4月1日のスタートを目指し、住宅を含む建築物の省エネ性能表示の仕組みやルールについて検討を続けていました。

 

そして2023年6月には、工務店やハウスメーカーが表示制度を運用する際の参考資料となるガイドライン案がまとまりました。今回は、新たに導入される省エネ性能表示制度に関する最新情報を紹介します。

 

- INDEX -

  1. 脱炭素社会の実現へ、住宅の省エネ性能に着目
  2. 表示対象は分譲住宅など、注文住宅は建築士が説明
  3. 目安光熱費も、評価は星の数など多段階で表示
  4. 見やすく比べやすいラベルデザインに

 

脱炭素社会の実現へ、住宅の省エネ性能に着目

建築物の省エネ性能表示制度は、その物件の省エネ性能をわかりやすく見える化することで、消費者が省エネ性能の観点で購入する住宅を比較・検討したり、建築物の省エネ性能に関心を持ってもらいたいという狙いから導入されました。

対象は戸建てのほか、賃貸も含まれます。国は、2050年の脱炭素社会の実現に向けて、この制度の導入をきっかけに省エネ性能が高い建築物が選ばれやすい社会にしたいと考えているようです。

 

これまで、工務店・ハウスメーカーなどによる省エネ性能表示は、罰則のない「努力義務」でした。そこで国は、法改正によって「表示すべき事項」や「表示の方法」、「遵守すべき事項」などのルールを定めました。

もし、事業者がこのルールに従わなかった場合、国土交通大臣による勧告・公表、そして措置の命令といった厳しい対応ができるようになるとしています。 

 

表示対象は分譲住宅など、注文住宅は建築士が説明

省エネ性能表示の対象となる建築物は、新築の分譲住宅や分譲マンション、賃貸住宅、買取再販住宅などとしています。一方、施主と工務店・ハウスメーカーが請負契約を結び建築する「注文住宅」は対象外となる見込みですが、ガイドラインでは「準拠した表示に努めて欲しい」としています。

 

建築士に設計を依頼する注文住宅は、2021年4月から国が定める省エネ基準に適合しているかどうかを施主に説明することがすでに義務化されています。

 

窓枠の素材やガラスの枚数、断熱材の厚み、太陽光発電システム搭載の有無など、設備や仕様を選ぶことで、省エネ性能値がどのように変わるのかを設計者と施主が確認しながら、家づくりをするイメージです。そのため、注文住宅の施主は住宅の省エネ性能について自ずと興味・関心が高まるのではないでしょうか。

 

また、現在は省エネ基準への適合は「努力義務」となっていますが、2025年4月以降に着工する住宅(建築物)は、省エネ基準への適合が義務付けられます。2024年度中の着工であれば省エネ基準を満たす必要はありませんが、わずか1年足らずで現行の基準に適合しない「既存不適格建築物」となる可能性もありますので注意しましょう。

 

目安光熱費も、評価は星の数など多段階で表示

次に表示項目や表示方法について紹介します。

 

ガイドラインでは、住宅が表示すべき事項として①外皮性能②一次エネルギー消費量――について、星(★)の数などの多段階評価で示すよう求めています。あわせて、評価した日時も表記します。

 

外皮性能は、別な制度(住宅品確法)の基準を活用し、地域別に7段階の評価となります。

 

1次エネルギー消費量の表示は、基準となる一般的な住宅のエネルギー消費量から、どのくらい削減できるかを5段階で表示します。最高ランクは、基準から30%以上削減できる住宅となりました。

 

一次エネルギー消費量の削減率
(単位 パーセント)
一次エネルギー消費量
に係る多段階評価
30以上 4
20以上30未満 3
10以上20未満 2
0以上10未満 1
0未満 0
等級 (地域の区分に応じた)外皮平均熱貫流率(単位 W/(m2・K))
1地域 2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
7 0.20 0.20 0.20 0.23 0.26 0.26 0.26
6 0.28 0.28 0.28 0.34 0.46 0.46 0.46
5 0.40 0.40 0.50 0.60 0.60 0.60 0.60
4 0.46 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
3 0.54 0.54 1.04 0.25 1.54 1.54 1.81
2 0.72 0.72 1.21 1.47 1.67 1.67 2.35
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このほか、任意に表示できる項目として、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギー機器の設置の有無、再エネを考慮した一次エネルギー消費量の多段階表示、第三者評価の有無、住宅の目安光熱費などとしています。

 

再エネを考慮した一次エネルギー消費量の多段階表示は7段階の表示となります。住宅を購入する前に目安光熱費がわかると、新生活の家計設計が立てやすくなるため、便利になりそうですね。

 

表示方法は、住宅を販売する際に使う広告(パンフレットやウェブサイトなど)などとしています。

 

見やすく比べやすいラベルデザインに

最後に表示ラベルのデザインについて。ラベル案の一例を示します。

 

 

この原稿を執筆している2023年9月時点ではラベル案ですが、省エネ性能や評価項目、数値などが把握、比較しやすいわかりやすいデザインに落ち着きそうです。

 

住宅は一度建てたらあなたの人生よりも長く住み継ぎ、使い続けるもの。住宅にかかる費用は、建てるときの建設費用よりも、その後の暮らしにかかる光熱費やメンテナンスなどの維持管理にかかる費用のほうが多いとも言われます。ぜひ、省エネ性能にも配慮した住宅づくりを心掛けてみてはいかがでしょうか。

 

参考:国土交通省・建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会

 

参考:国土交通省・建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(案)

 

 

執筆:住宅産業新聞社

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