COLUMN家づくりコラム
戸建注文住宅の平均顧客像は?最新の調査結果からトレンドを分析
現在、新しい住まいを検討中のみなさんは、ほかの人たちがどのような住まいを計画し、実際に建てているのか、気になりませんか?
大手ハウスメーカーなどで構成する業界団体(住宅生産団体連合会)が毎年実施している戸建注文住宅の顧客実態調査結果をみると、戸建注文住宅を実際に建てた平均顧客像がわかります。
このほど、最新(2022年度)の調査結果が発表されました。世帯主の年齢は? 資金計画は? 最近はやりのZEHにするべき? など、調査結果からみなさんが気になる住まいのトレンドを紹介しましょう。
-INDEX-
- まずは調査概要と平均値を紹介。建築費の上昇が続く
- 建築費アップは物価高騰だけじゃない。より快適で便利な暮らしのための先行投資
- 世帯年収平均が初の1,000万円の大台に、共働き世帯の増加や世帯主年齢の上昇が影響か?
- 高額な住宅購入資金、共働き世帯はペアローンや収入合算で対応
- コンパクト化する住宅、間取りや動線計画がますます重要に
まずは調査概要と平均値を紹介。建築費の上昇が続く
戸建注文住宅の顧客実態調査は、住宅会社が戸建注文住宅の顧客ニーズの変化を把握することを目的に2000年から開始しており、今回で23回目となります。2022年度調査のサンプル数は3,222件。ハウスメーカーの営業担当者が調査票を記入し、集計しています。
まずは、2022年度の戸建注文住宅の平均顧客像をみてみましょう。
- ・世帯主年齢は40.6歳。21年度と比べて0.7歳上昇しました。
- ・世帯人数は3.07人。21年度と比べて0.07人減少しました。
- ・世帯年収は1068万円。21年度と比べて75万円増加しました。
- ・住宅の延床面積は123.6㎡。21年度と比べて0.9㎡小さくなりました。
- ・建築費は4,222万円。21年度と比べて408万円増加しました。
- ・平均建築費単価は1㎡あたり34.2万円。21年度と比べて3.6万円増加しました。
- ・建築費と土地代を合わせた住宅取得費は6370万円。21年度と比べて587万円増加しました。
- ・自己資金は1,915万円。21年度と比べて434万円増加しました。
- ・贈与額は1,117万円。21年度と比べて421万円減少しました。
- ・借入金は5,473万円。21年度と比べて506万円増加しました。
- ・借入金年収倍率は5.12倍。21年度と比べて0.12ポイント上昇しました。
戸建注文住宅の平均顧客像(2022年度)
カッコ内は前年度との比較、△はマイナス
世帯主年齢 | 40.6歳 | +0.7歳 |
世帯人数 | 3.07人 | △0.07人 |
親子世帯
※1
|
52.4% | △1.8㌽ |
世帯年収 | 1,068万円 | +75万円 |
古家解体・新築率 | 29.3% | +1.1㌽ |
延床面積 | 123.6㎡ | △0.9㎡ |
住宅取得費
※2
|
6,370万円 | +587万円 |
建築費
※3
|
4,224万円 | +408万円 |
自己資金
※4
|
1,915万円 | +434万円 |
贈与額
※5
|
1,117万円 | △421万円 |
借入金
※6
|
5,473万円 | +506万円 |
借入金の年収倍率 | 5.12倍 | +0.12㌽ |
有効サンプル数=3222件 ※1 二世帯(三世代含む)同居11.1% ※2 建築費と土地代の合計 ※3 古家解体・新築の場合は4,762万円 ※4 自己資金比率26.2% ※5 「贈与あり」のみ ※6 「借入あり」のみ
この結果を要約すると、「世帯年収が増加したものの、贈与額が減少し、建築費、住宅取得費が上昇したことから、延床面積を抑制するとともに、自己資金や借入金を増やすことで対処している状況」が読み取れます。
建築費アップは物価高騰だけじゃない。より快適で便利な暮らしのための先行投資
1㎡あたりの平均建築費単価は、上昇基調が続いています。特に、21年度から22年度の上昇幅は過去10年で最も大きく、改めて物価高騰の影響が浮き彫りになりました。
建築費単価の上昇要因は物価高騰だけではありません。高性能な断熱材を採用して断熱性能を強化したり、高効率な給湯器、LED照明などで省エネ性能を高めたり、太陽光発電システムや蓄電池で光熱費を削減したりと、より快適で便利な住宅にするための掛かり増し費用も単価アップにつながっています。
1度建てたら何十年と住み続けることになる住まいです。暮らし始めてから後悔することのないように、今のうちからしっかりと計画をたてておくとよいでしょう。
世帯年収平均が初の1,000万円の大台に、共働き世帯の増加や世帯主年齢の上昇が影響か?
2022年度の調査では、世帯年収平均がついに1千万円を突破しました。これは、共働き世帯の増加や世帯主年齢の上昇などが戸建注文住宅の平均顧客像にも影響していると考えられます。
厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、2021年の1世帯あたりの平均所得金額(全世帯)は、545万7000円でした。このうち、戸建注文住宅の主な検討層となる子育て世帯(児童のいる世帯)の平均所得金額は785万円でした。全世帯平均と比べて200万円以上多くなりました。
次に、児童のいる世帯で母が「仕事あり」の割合は75.1%。雇用形態は、正規の職員・従業員の割合が30. 6%、非正規の職員・従業員の割合が36.4%。子育て世帯の4分の3が共働きとなっています。
高額な住宅購入資金、共働き世帯はペアローンや収入合算で対応
高額となる戸建注文住宅の購入資金は、夫婦で協力して工面するというケースが一般的になりつつあるようです。この動きを裏付ける調査結果があります。
戸建注文住宅の顧客実態調査結果では、住宅ローンの借入状況についても調査しています。それによると、借入について、ペアローンあるいは夫婦など収入合算の利用状況をみると、「利用なし」が57.9%と半数超を占める状況は変わらないのですが、その割合は2021年度と比べて0.5ポイント低下しています。一方、「利用あり」が1.4ポイント増かの41.0%に上昇しました。
さらに、ペアローンか収入合算を利用した人に対して、どちらを利用したかを分析すると、ペアローンが40.7%、収入合算が59.3%となりました。
ペアローンとは、同じ住宅に対して夫婦(や親子)がそれぞれ1本ずつ住宅ローンを組む方法です。一方、収入合算は夫婦(や親子)の収入を含めた全体の収入で住宅ローンの審査を行う方法です。どちらの方法も1人で住宅ローンを組むよりも借入額を増やすことができます。
コンパクト化する住宅、間取りや動線計画がますます重要に
最後に、実態調査結果からは平均延床面積の縮小傾向が読み取れます。
これは、高騰する建築費を少しでも抑えたいという狙いもありますが、世帯人数が減っていることから「自分たちにちょうどいい住まい」を求めるニーズが増えているともいえそうです。家事動線や生活動線を考えたときに、上下階の移動がなくて効率的な暮らしが実現できる「平屋」がいいという声も増えているようです。
コンパクトな住宅でも、間取りや動線、収納計画を工夫することで快適な暮らしが実現できます。さまざまな条件で多くの住宅を設計・建設してきたハウスメーカーは、住まいづくりに関する豊富なアイデアを持っています。「こんな暮らしがしたい」というイメージがあるのなら、まずは身近なハウスメーカーに相談してみるのもよいでしょう。
参考:住宅生産団体連合会の「2022年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」
参考:厚生労働省の2022年国民生活基礎調査
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